上田市 大きな窓の家~小島陽だまりの里~〔2014年6月24日〕ご主人様より

日本の住宅産業の課題や気づいたこと

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実際に住宅を建ててみて,日本の住宅産業の課題や気づいたことなど幾つか述べてみたいと思います。


(1) 木材について美し信州建設の家は,柱や梁など構造材に無垢材を使用しており,住む人に穏やかで落ち着いた印象を与えます。それだけではありません。引き戸(シナベニヤ)一つにしても木の風合いが感じられます。いたるところに人の手で作ったという痕跡が残っており,それがとても良い情景を醸し出しています。構造材や下地材などに多くの県産材(地域産材)が使われています。これは,「持続可能な社会」の実現のためにとても意味のあることと考えられます。日本は石油,食糧,飼料,木材など重要資源を輸入に頼り,しかもその資源獲得競争は厳しさを増しています。つまり,資源量は限られているにも関わらず,それを必要とする人たち(需要)が増大し,政治・経済力を背景とした奪い合いが起き,輸入価格が高騰しているのです。木材の場合,特有の事情はありますが,価格としては,米ツガ丸太\24,200/m³,北洋エゾマツ丸太\24,000/m³,国産ヒノキ中丸太\21,600/m³,国産スギ中丸太\11,800/m³である(2010年森林・林業白書)。ですから,木材を地産地消することは,資源価格・為替変動の影響を受けにくい安定した日本経済の成長に貢献するはずです。そして,日本や世界の森林環境の保全にも役立ちます。それだけではありません。木材の地産地消は,エネルギーの自立という観点から,これからの日本に大きなインパクトを与える可能性があります。木質バイオマス発電です。農林水産省など様々な機関からバイオマス発電に関する資料[1]が出ていますので,詳しくはそちらをご覧ください。重要なことは,日本の国土面積3779万haのうち,森林面積は2510万haであり,国土の2/3を森林が占める,北欧と並ぶ森林大国だということです。ところが,日本の木材自給率は27.9%(2012年)であり,木材需要の7割以上を輸入に頼っているのである。

[1] 例えば,http://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/index.html

(2) 税金,負担金,手数料など多くの負担がある不動産取得税,固定資産税,登録免許税,印紙税,手数料,水道加入負担金など多くの費用がかかります。建築工事に関して消費税を負担したうえに,さらに多くの負担を求められますから,二重に課税されているという感覚を持ちました。まだ他にも出費があります。ローン費用,保険料,外構工事,カーテン代など。これでは,これからの若い人たちが家を建てようという気持ちが冷えてしまいそうです。今後,消費税は10%になりますし,日本の経済力を維持するためにも,税金・負担金等の見直しが必要です。加えて,手続きも改善する必要があります。税金などは基本的に申請しなければ還付されません。手続きと制度は複雑にしてはいけません。手続きと制度が複雑ということは,コストアップになります。ですから,一時的な減税(特別減税)ではなくいわゆる恒久減税であることが望ましいのです。

(3) 音の問題吹き抜けのあるリビングは開放的で気持ちが良い。後になって気づいたことは,音の問題です。リビングのTVなどの音は実によく2階に響く。子供の勉強の妨げになるので,両親や家族のTV・音楽鑑賞は相当制限されることでしょう。もっとも,今の子供は,学校行って部活動して,スマートフォンでソーシャルゲームとSNSにはまって,テレビ見て寝るだけかもしれませんが!?(補足:スマホ依存症は世界中で社会問題化。日本でもスマホチルドレンなどと呼ばれ強く懸念されている。) 

(4) 日本ブランド美し信州建設株式会社のスタッフ,パートナーと呼ばれる職人さん一人ひとりがしっかりとした自覚を持ち仕事をして頂きました。職種は違っても,一人ひとりが,一つ一つの仕事を丁寧に積み重ねた結果が,「いい家」と呼ばれるようになるのでしょう。木造軸組み注文住宅は,日本の風土に合った,しかも日本人のこだわりやチーム力を体現した世界に誇る「日本ブランド」の一つと言ってよいかもしれません。自信を持ってよいと思いますが,まだまだ挑戦すべき部分はあると思います。社会環境も常に変化しています。住宅業界においては,ビッグカンパニーであることが生き残る絶対条件ではないと思います。作り手の思いだけではなく,お客さんの思いも受け止められれば,生き残っていけることでしょう。一方,消費者側も,目先の安さ・利益だけにとらわれない少し先を見た賢い選択も時には必要でしょう。品質,性能,コスト,飽きずに使い続けられるか,すぐにゴミとなってしまわないか,など様々な観点があることでしょう。私自身は,様々な観点を考慮しつつ自分の住宅の設計に関与できて,とてもおもしろく感じた。

最後になりましたが,関係者の皆様のますますのご活躍とご健康をお祈り申し上げます。最後まで読んでいただき,ありがとうございました。

 

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