上田市 二世帯が同居する和の佇まいの家

上田の100年を彩る景色のひとつとして、大事に守っていきます

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「家を持とう」 最初に考えたのは妻の海外赴任から帰ってきて2か月後のことでした。赴任中に一時帰国した際には毎回、東京でホテル暮らしになってしまっていたことから、どこで暮らしていても「帰れる場所」が欲しいと思ったのかもしれません。

まず、生活の拠点だった東京で家を探しましたが、新築だと驚くほど高い土地代、中古だとローンの組みづらさの問題にぶつかりました。どちらも無理をすれば実現できそうでしたが、その無理をすることが果たして幸せなのかと考えたときに、決してそうではないだろうという結論にいたりました。

同じくして、上田市にある妻の実家の耐震検査がありました。大正時代に建てられていることもあり、検査の結果は酷いものに。そこで妻の実家を建て替えて、私たちが帰れる部屋も作ってはどうだろうと考えました。上田は東京から車だと2時間半、新幹線なら1時間強ほどで行ける場所です。東京と比較して土地も安く、家自体にお金をかけることができる。何より、私たちだけでなく、安心して妻の家族全員が暮らすこともできます。人生で何度も組めるものではない住宅ローンの使い道としては最良であると判断し、私たちの帰る場所、そして妻の家族が安心して暮らす場所として、上田に家を建てることにしました。

家を建てることは決まったわけですが、まず迷ったのが、どの会社にお願いするのかです。そこでいくつかのモデルハウスを見学に行きました。私たちの家のヴィジョンはある程度固まっていましたので、それに近い家を作っている会社にお願いすれば満足がいくものになるのではないかと考えました。いくつか候補の会社をまわり、「ここはぴったりだ」という2つの会社に巡り会いました。美し信州建設さんと、市外に本社を持つ別の会社でした。

はじめ、市外に本社を持つ会社とある程度話が進みましたが、徐々にすれ違いが起きてしまいます。その会社は、私たちがいいと思う家にするのではなく、自分たちがいいと思うものにしたかったようなのです。他方、美し信州建設の中村さんはまったく違いました。まず、私たちの目指すヴィジョンを受け止め、ローン、法律について詳しく教えてくださっただけでなく、自社が採用している工法のメリットとデメリットの双方を真摯に説明してくれました。もう一社の営業担当の方は口当たりの良いことばかりを話し、デメリットに関して尋ねても一切話してはくれませんでした。私たちの中村さんへの信頼はそこですでに確立されたといっても過言ではありません。

もうひとつ、美し信州建設さんに決めた理由は、設計の平林さんです。恥ずかしながら、家づくりの相談に初めて行った際、すでに家のレイアウトを固めた図面を作っていました。平林さんは私たちの話もじっくり聞いてくださり、素人の書いた図面を大きくブラッシュアップ。理想の家の図面として仕上げてくれました。家を建てようとしている人の考えに常に寄り添って、現実のものにする。そのプロフェッショナルな姿勢に感銘を受けました。さらに、中村さんとの漫才のような掛け合いが私たちに常に安心感を与えてくれたのは言うまでもありません。

妻の実家があったのは古い家が立ち並ぶ上田らしい風情がある場所で、家を建て直してもその景観を損ないたくないと思いました。そこで環境に合わせ、薪ストーブを導入しながらも、瓦屋根の古い日本家屋の雰囲気を残した外観にしてもらいました。間取りは、薪ストーブを中心としたリビング、家族それぞれの部屋と私たち夫婦の部屋、そして憧れであったシアタールームと吹き抜けのある2階建ての設計に。また、将来的な私の仕事場として屋根でつながった物置(アトリエ)も組み込んでもらいました。

余談ですが、我が家の施主は妻でした。私はフリーランスとして働いているので、企業の勤め人である妻がローンを組む方がいろいろと都合がよかったためですが、そのせいで多大な苦労を掛けさせてしまいました。金融機関などに提出する書類関係や各種手続きなど、家の建て替えに関する多くのことを妻がやってくれたことには感謝の言葉しかありません。

4月の着工から10月末に完成、11月頭に引き渡された家は、私たちの理想そのものでした。無理をいってお願いしていた梁や床の柿渋色への着色も素敵な仕上がりに。ゆっくりと必要なものをそろえつつ昔の家のものを処分しているので、本稿執筆時の12月中旬もまだ家具がそろいきっていませんが、中村さんと平林さんをはじめ、社長の中嶋さん、建築のことから電気器具のことまで何でも知っていて頼れる現場監督の小井戸さん、素晴らしい技術を持った棟梁の霜鳥さん、我が家の2階の棟梁・荻原さんなど、たくさんの人が関わって建ててくださったこの家の暮らしは格別です。
これからの人生をこの家とともに歩んでいくとともに、これから上田の100年を彩る景色のひとつとして、大事に守っていきます。(2017年12月)

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