木を寝かせる意味
少し前まで、町の中に材木屋さんの風景がありました。大きな敷地に木材が立てかけてあって、子どもがそこで遊ぼうものなら「危ないよ」という怒声が声高に響きました。
日本の木材流通は複雑だと言われています。その複雑さが木を高いものにしてきたと言う指摘があります。でも、木にとって一番大切な乾燥という点で、良かったことも見逃せません。
山で木が伐られ、先ずそこで葉枯らし乾燥されました。原木が木材市場に出され、製材屋さんに置かれ、製材されて町の材木屋さんに運ばれますが、その間に生じる時間は少なくありませんでした。そのスローな時間は、木の乾燥にとって必要なことでした。私たちの木材倉庫は、そうした役割を実質的に担っているのです。
美し信州建設では、色よく仕上がり、木の匂いも残る<中温乾燥>でゆっくりと乾燥させた材を木材倉庫に持ってきて、さらに半年以上寝かせます。木はとろとろとまどろみながら、上田の気候と馴染みつつ、乾燥していくのです。百年の寿命を保つ家を建てるには、木にもそれだけの身支度が必要、私たちはそう考えています。
代表取締役 社長
材木倉庫に「美し信州建設の未来がある」と言った父
この材木倉庫は美し信州建設の宝物庫です。木曾や南信州の産地から買い付けた木材は、ここでじっくりと寝かせて、上田の気候に馴染ませます。そうして使えるようになったものから、監督と大工さんが建てる家に合わせて吟味し選びます。
それだけ聞くと当たり前のようですが、材木屋さんから直接届いた木で家を建てることと比べると雲泥の差があります。木の乾燥状態をチェックし、適材適所に選りすぐるというプロセスを経て長寿命な百年の家となるんです。こんなことが、四半世紀以上に渡り続けられているんですよ。
私が中学生の頃、父(中嶋守夫前会長)に連れられてここに来て、「この材木倉庫に美し信州建設の未来があるんだ」と言われたことがあります。今、強い実感をもって、その言葉を受け止めています。